- 2018.08.01
想いに寄り添う ~美味しいコーヒーが飲みたい~
- 翔月庵 加古川
翔月庵 加古川の事例を紹介させていただきます。
昭和15年11月生まれ 77歳 要介護5 男性
入居年月日:平成29年11月28日
既往歴:平成20年 脳内出血(後遺症、右半身麻痺)
平成21年 前立腺肥大
平成25年 誤嚥性肺炎
平成28年 誤嚥性肺炎再発、
ご入居されてからは発熱を繰り返し、排便のコントロールも困難で体調面に不安定な状態が続いていました。疾患の影響もあり、座位を10分以上保持する事が出来ずベッド上での生活を余儀なくされ、入浴に関しては居室内での清拭対応、食事に関しては3食共全て居室配膳で全介助の対応でした。ご家族が面会に来て下さる際も眠られている時間が多く、話しかけても反応が全くない状況が続きました。
そこで職員間でカンファレンス(話し合い)を実施、再度アセスメント(聞き取り)からやり直す事にしました。
まずは職員が居室を訪れ話かける回数を増やしました。職員が笑顔で挨拶、自己紹介を行う事を続けていると、最初は返答や反応もありませんでしたが徐々に反応して下さるようになりました。その事をご家族が面会時に来て下さった際に伝えていく事を何度か繰り返している時に「趣味の話」になり、「コーヒーが好き、特に味はブラック」という話を教えて頂く事が出来ました。私たち職員は「日曜日に食堂内で実施している喫茶に来て頂き、コーヒーを飲んで頂こう」と目標を立てました。
その目標を達成する為には何が問題であるのかを洗い出し、一つ一つ出来る事を解決していきました。コーヒーを飲むという事は咀嚼、嚥下機能向上がスムーズに出来る必要があります、歯科医・歯科衛生士に協力して頂き義歯制作、装着の実施。その後の定期的な口腔ケア、マッサージのやり方を直接指導して頂き、私たち職員でも対応出来るようにしました。次に居室から食堂内への移乗・移動方法について考えました、座位時間に制限がある中でどのように移乗して頂く方法が良いのか、職員同士で意見を出し合いました。出し合った移乗方法を行い、まずは館内の散歩・屋上での日光浴等を少しずつですが行い、座位時間の延長を試みました。そのような日々を繰り返しながら体調を見させて頂き、約3ヶ月が経過、看護師より体調面で安定してきた事、どの職員も安定した移乗が出来るようになった事で、日曜日の喫茶に参加してみませんか、と想いを伝えてみました。
最初は戸惑った表情をされていましたが、「美味しいコーヒーを飲みましょう」との声かけにうなずいて下さりました。
喫茶の時間が近づいてきました。コーヒーをすぐに飲んで頂けるように準備をしてお声けし、居室から食堂へ移動して頂きました。すると、ふだん職員介助でしか食事されないのですが、ご自分でコーヒーカップを手に持って飲まれようとする姿が見られ、立ち会った職員一同大変驚きました。
ご自分でコーヒーを美味しいそうに笑顔で飲まれているご様子を職員も笑顔で見守らせていただき、後日ご家族に写真を見て頂きお伝えすると、ご家族も驚かれ大変喜んで下さいました。これから私たちは、いつか食堂で他のご利用者と一緒にご自分で食事を食べて頂くことを目指し支援していきます。
このようにご利用者の笑顔、ご家族の笑顔を見ると本当にやりがいを感じられ、明日も頑張ろうという前向きな気持ちになります。今後もご利用者の想いに寄り添うケアを実践していきます。