- 2019.11.01
想いよ 届け ~クレームから学んだこと~
- 翔月庵 加古川
「決意表明」
翔月庵加古川の19期の主な取り組みは、個々の関わりを密にする為に、個別受け持ち制を導入します。ケア以外の場面で出勤毎に1度は訪室し「挨拶を含め、何かお困り事はないか、気になっている事はないか等」積極的にコミュニケーションを職員から取っていきます。
「ではなぜ、個別受け持ち制を導入するのか?」
18期の取り組みは楽しく生活して頂く為に、環境作りに力を入れてきました。食堂やケアステーションの壁面に立体の花等を飾り、普段は施設外へと出られる事のない利用者様にも、楽しんで頂く工夫をしてきました。
4月の行事では、和菓子の実演と利用者様自分自身でたてられたお茶を楽しんで頂くお茶会を開催し、以前より明るい雰囲気作りを目指し取り組めていると職員は思っていた中、お客様からクレームを受ける事になってしまいました。クレームを指摘して下さったのは、N様 91歳 男性で車椅子の生活をされている方です。
「事例紹介」
N様は長年医院を開業されていた、普段はとても穏やかな方です。その反面、奥様の前では亭主関白な一面も持たれていると聞いています。奥様と自宅で二人暮らしをされていましたが、平成30年3月頃より自宅にて転倒されることが増え、奥様単独での自宅介護は困難との声があり翔月庵加古川への入所の運びとなりました。
「クレームの内容」
そのN様が口にされたクレームを説明させて頂くと、朝食後の居室への誘導時、介護職員より「帰ろか。」との声掛けをされ、その言い方は節度を越えていると感じ、直接職員に指摘するも職員本人からは「言ってない。」と返答があったとの事でした。N様にすれば同様の言葉を以前より何度も耳にしていたので今回は直接指摘されたとの事でした。また、ご自身の入居時より気になられていた事として、職員間の話し方や、職員の他の利用所様に対する慣れ慣れしい言動、上から言う言動が気になっていたという想いを話されました。
「原因・分析」
今回のクレームの原因は「言葉遣いの悪さ」であるとその時、職員は考え言葉遣いを変える取り組みを始めました。言葉遣いを変える取り組みの中で、意識して「です。」「ます。」をつける事で“ぎこちなさ”“よそよそしいのでないか”との違和感があり、言葉遣いを意識しすぎて、円滑な会話にならない、取り繕っている感じがすると感じていました。どのような声掛けをすればよいかを意識するあまり、声掛けが普段は出来ているのに、出来ない状態にもなっていました。直接的でなく間接的な時にもN様の存在を感じると普段であれば「おいしい?」と聞く会話の中でも、「おいしい・・・ですか?」ととってつけたような声掛けになっていました。各職員が実際に取組み、感じた事は「言葉遣いの悪さ」だけが問題ではないと改めて気付く事となりました。
「再検証・再分析」
クレーム内容をもう一度振り返ると「入居時より・・・」と入居されてから数か月、気になっていたにもかかわらず、想いを話せなかったのはなぜか?
・明るい雰囲気だけでは、話しやすくはならない。
・ただ話をしているだけで具体的ではなかった。
・言葉が丁寧でもよそよそしいのは話しにくい。
と考え、職員の「言葉遣いの悪さ」についての取り組みは、職員主体であり、利用者様主体ではなかったのではないか。利用者様からの目線と職員からの目線では違いがあり、職員の想いは利用者様に届いていないことから、利用者様と職員の間に距離がある事にようやく気が付く事になりました。
「まとめ」
では利用者様の想いに気付き、職員の想いを届けるにはどうすればいいか。入浴・食事・排泄等の直接介助を日々の作業として行うのではなく、「何の為、どんな想いを持っているか」等を含めもっと利用者様に興味を持ち、利用者様と関わる時間を多く持つ為の工夫を各職員が考え行動し、振り返る事が重要です。また自分の親・祖父母だったらどのようにして欲しいか等を常に考え
その人を大切に想う気持ちが大事。
と言う事に改めて気づかせて頂きました。N様からは「皆がよく頑張っているのは近くで見ているから良く知っています。」と仰って下さいます。
勇気をもって、私たちに大切に想う気持ちが大事という想いを届けて下さったN様に感謝致します。