Cina 株式会社シーナ
「あきらめない介護」、「明るい老後」、「望まれる給食」で
高齢化社会をサポートする株式会社シーナです。
事例紹介 事例紹介
  • 2019.04.22
  • 寄り添うケア ~拒否から始まる人間関係~

  • 翔月庵 加古川
  • ●初めに

    日々のケアの中で、介護拒否をされる方との関わりで対応に悩む場面は多くあります。今回、入浴に対して強い拒否をする方との関わりを通して学ぶことのできた事例を紹介いたします。

    【入浴の定義】とは

    ・皮膚の清潔を保つ
    ・心身のストレスを取り除く効果がある。
    ・長期間入浴せず、シャワーも浴びなかった場合衛生状態が保たれず皮膚炎や感染症を引き起こす可能性がある。
    ・入浴する事で排泄作用を促進させる、睡眠を助長する等の効果がある。

    ●事例紹介
    【お 名 前】 Y様
    【年  齢 】 95歳
    【入居年月日】 平成26年10月16日
    【介 護 度】 要介護度1
    【既 往 歴】 右大腿骨骨折・老人性皮膚炎・骨粗鬆症・アルツハイマー型認知症

    【普段のご様子】
    ・日中は食堂で過ごされている。
    ・(表情豊かで)お話が好きで、スタッフへ「ちょっとアンタ」から始まり、今では「お姉ちゃん、お兄ちゃん、おっさん」等笑顔で声を掛けて下さる。
    ・何にでも好奇心旺盛で、スタッフが話をしていたり仕事をしていると「それは今何してんの?」と色々質問して下さる。
    ・他の利用者様へ「アンタ頑張りよ。私も頑張るから。」と声を掛けて下さる優しさがある。
    しかしその反面…。
    ・他の入居者様を睨みつけ、「そこにおったら邪魔や。はよどけババア」と叫ぶ。
    ・嫌いな方に対しては話をせず、無言で睨み続ける。(スタッフが声を掛けても「何もない」と不機嫌をあらわにされる)
    ・不機嫌な時に声掛けすると「うるさい、あっち行って」など、拒否が強い。
    ・入浴の際は「行かん!気分が悪い。めまいがする。別にあんたには関係ないやろ」と叫ぶ。といった一面もあります。

    では、
    これまではどんな感じで入浴前の声掛けを行っていたか?

    1.  お風呂行きましょうか。→拒否
    2.  身体綺麗にしに行きましょう。→拒否

    お風呂入ったら気持ち良いですよ→拒否どのパターンも入浴拒否されます。
    何故でしょう??
    一般的に入浴拒否(介護拒否)の原因は大きく2つに分かれます。
      ①羞恥心
      ②不安(※介護拒否とは食事、入浴、介護等の声掛けや誘導に抵抗を示す事である。) 
    ちなみに介護拒否があった場合の対策として
    ・拒否があっても、介護者側が過剰に反応しない
    ・無理強いしない
    ・関わる側や、環境の問題を見直す
    ・「この人なら任せていい」という安心感を持ってもらえるよう、1日を通しての接し方に配慮する。
    ・要求に耳を傾け、出来る限り、本人の満足感を満たせるよう支える。
    等があります。

    今回、「関わる側」と「環境の問題」を見直すという点に着目していきました。
    では、今回の入浴拒否はどちらのパターンに当てはまるか?
    問題を見直すべく、様々な方面から情報収集を行いました。
    情報①お風呂は好き。
    (ご長男からの聞き取りより)
    情報②足が思うように動かなく自分でお風呂に入れなくなった。
    情報③入浴中は機嫌がいい。
    情報④めまいの症状を改善する治療を行ったがあまり効果はなかった。
    情報⑤Y様のお母様が入浴中に急変してお亡くなりになった。
    これらの情報から入浴拒否の原因は
    ・羞恥心ではなく、不安からくるものであると推測。(羞恥心であれば入浴介助中機嫌良いという事はないと思います。)
    ・Y様のお母様が亡くなられY様本人も年老いてきて同じようになるのではないか?という不安から今回のケースに至ったのではないかと推測。
    めまいは入浴を拒否する為の理由ではなかったかと考えられる。
    この事から情報収集する事で様々な不安を抱えている事を知ることができた。


    ではその【不安】を【安心】に変える為に行った事。
    ・日頃から食堂で過ごしているので、毎日、少しでもスタッフとの会話を楽しんで頂き、コミュニケーションをはかる。お帰りの際には「Yさんと話が出来て楽しかったです。またお話しましょうね。」とスタッフからの感謝の気持ちも伝えるように意識しました。
    ・入浴の時は、無理強いはせず「着替えだけでも良いですよ。」 と毎回声掛けを行い、無理に入浴しなくてもいいことを伝えて受け入れてもらう。
    ・入浴前は必ずバイタル測定を行うが、Y様は『バイタル測定=お風呂』と考えておられ、バイタル測定に嫌悪感があった。看護師が事前に体調の確認を行い、入浴後にバイタル測定をする。現在では入浴前にバイタル測定を行っても拒否無く笑顔も見られます。
    その方法で何か変化はあったのか?
    ・毎日の声掛けにより、Y様とスタッフでしっかりコミュニケーションが取れており入浴の際にでも「一緒におってよ。アンタら一緒なら大丈夫やな。」とお言葉を頂ける様なった。
    ・スタッフとの信頼関係が築け、不穏な状態が極端に減り、現在では叫び声が全くなく、睨む行為も無くなった。 

    • 何を学んだか?

    ・ご利用者様の過去の経緯やその時の感情はとても大切です。ご利用者様とスタッフとの常日頃から信頼関係が日頃からしっかり出来ているのかということが拒否や要望に繋がっていく事を改めて実感しました、その中で、言葉の選び方や個々の接し方を学び直す事が出来ました。
    ・ご利用者様の過去や経歴、過ごし方等を知っていくとその時その時どのような感情か、悲しい事や嬉しい事、楽しかった事等色々な感情や知らなかった一面を知る事が出来ました。
    ・スタッフとしての喜びや楽しさを再度認識し、スタッフ同士のコミュニケーションを図る事が出来ました。
    『介護側の自己満足で終わるのではなく、その人の奥深くを知る事の必要性と大切さ』すなわち、それは寄り添うケアです。
    介護者側の自己満足ケアで終わっている事が多々あると思いますが、そうではなくその人に寄り添う事が大切なのだという事を学びました。