Cina 株式会社シーナ
「あきらめない介護」、「明るい老後」、「望まれる給食」で
高齢化社会をサポートする株式会社シーナです。
事例紹介 事例紹介
  • 2019.11.11
  • ご利用者のアセスメントの重要性

  • アーチ・デイサービス 高砂
  • アセスメントの重要性を上げた、きっかけは、事業所会議で実務者研修に参加した職員から、アセスメントについての報告を聞いたときでした。

    ご利用者の事を、詳しく、体の事、生活歴など基本情報だけでなく、興味関心、好きな事、家族との関係などご本人の人柄まで分かるようなアセスメントが出来ている事に気付き、詳しくアセスメントする事で、ご利用者の全体像がイメージでき、ご利用者と共に目標設定をする事の重要性を痛感いたしました。その会議の時に、他の職員から、そもそも殆どのご利用者が、初回のフェイスシートのみできちんとアセスメント出来ていないのではない?現在のご利用者の情報では情報量が少ないのではない?普段関わっている中で聞いているご利用者の声を職員一同共有できているの?という疑問があがりました。そこでもう一度、書式から見直しを行い、全職員で共有する事となりました。

    本来フェイスシートとアセスメントシートは違うものです。

    フェイスシートは基本情報収集の為の物であり、アセスメントシートは、ご利用者のニーズや可能性を把握するためにさまざまな、情報を収集・分析するための物で、ご利用者のニーズを引き出していくものです。ですが、体験利用時と契約時の少ないコンタクトの中では、あまり多くの情報を集める事ができないのが実情で、はっきりとした目的意識を持ったご利用者ばかりではない中、「この為にデイに通いたい!」と思って頂けるだけの動機づけが出来るようなアセスメントができていないと感じました。

    個別機能訓練計画書も通所介護計画書も、ご利用者のニーズ、デイに通う意味、トレーニングをする動機、思い描く未来像が大切。その事をアセスメントでどこまで明確にできるのか?

    今までのアセスメントシートは、現状の聞き取りが主でした。起き上がり、立ち上がりは何も持たずにできる?外出の頻度?食事の形態は?一人で食べる事ができるの?と、言うような聴き取りになっていました。現在の生活の状態を聞く事は、今の困りごとを理解するのに手っ取り早く有効です。また、家庭でも病気、老化によって出来にくくなっている事は、日常になってしまっており、困りごととして認識されていない事が殆どです。例えば、何かにつかまらないと立ち上がりにくい。でも手すりに代わるものがあるから困らない。一人でのお風呂は時間もかかるし、一人では不安。でも,デイで見守りを受けてお風呂に入れるから困らない。若いころに比べたら何をするにしても時間もかかるし、出来ない事が増えたけどそんなもんでしょう。今のままで暮らせるなら良い。

    ご本人もご家族も、介護に関わる方もそう思う方が多いのではないでしょうか?現状維持の為のデイサービスの、トレーニングに目標は見出しにくく、やる気や動機づけには、難しい限りです。そこで、現在の状況と本人の思いが理解できるアセスメントシートを活用しました。今はこんな体になってしまった。でも、本当はこうなりたい。そんな思いがきっとあるはずなのに、知らず知らずの内に諦めていることもあるのではないでしょうか?

    一度に全てを面談のようにして時間を区切って聞き取ることは、多忙な日常業務の中では難しく、また、かしこまって聞き取るよりは普段の会話の中からフと出てくる言葉を聞き洩らさないように職員が意識する、その方がリアルな思いを聞けるのではないか?と、言うことを意識し関わりを深めていきました。

    写真のアセスメントシートをご覧ください。以前、情報収集していた内容は黒字、赤字は今回アセスメントして聴き取りした内容となっております。

    今回紹介させていただくKさんは、昭和15年生まれの79才の女性です。4年前に脳梗塞を発症され、現在は左半身に軽度の麻痺があります。ご主人と二人暮らし。独立した子供さんは遠方におられます。お話をお聞きすると、ご主人はまだ車の運転をされており、お二人で近くのスーパーに買い物にも行かれ、店内はショッピングカートを押して買い物をされるそうです。しかし、ご主人を待たせている事に気兼ねされ、また、長時間の歩行は疲れるとのことで「自分の下着など見たいものを、ゆっくり見て回る事ができないの」と、話がありました。入浴もデイサービス以外は自宅で一人で入られていますが、せっかちなご主人に手伝いを頼むと、イライラされ落ち着かず、一人では疲れてしまい、「洗髪はデイで職員さんがしっかりしてくれるから自宅ではもう頭は洗っていないの」とも言われています。                   

    身体が不自由になってから、毎月0,5キロずつ増えてしまい、脳梗塞発症前に比べると6キロも増えた。「食べる事が楽しみで家にいるときはついつい甘いものを食べてしまうから、最近膝への負担が出てきて困っているの。」「以前は大好きなコーラスに通っていたけど、今は自分一人で歩いて行くのが不安。でも、主人にも頼みにくいし、行けなくなった。歌うのは好きだしストレス発散になるのに・・・」などなど、マイナスな発言ばかり聞かれる中、たくさんの話を傾聴していると、ご利用中の入浴介助時や、送迎時、また女性同士で体重について話している時や家族の話をしている時などに、いろいろな声が聞こえてきました。

    こんな話を普段の業務の送迎中や、トレーニングの合間、食後のゆとり時間などに職員が聴き取り、そうして集めたKさんの情報を、詳しいアセスメントシートに落とし込む事で、今まで見えなかったニーズを引き出す事が出来ました。

    目標を設定することは思ったより簡単ではなく、さらにモチベーションを上げるとなると、なお難しい課題でありましたが、ご本人とアセスメント内容を元に話し合いを重ね今回は「以前のようにコーラスに行く」という、目標でご本人は喜び納得していただけました。アセスメントは、サービス提供する上での原点です。相談員、看護師中心に計画書を作る上で、聞き取りをした内容を落とし込むだけでは不十分だと再認識しました。

    全職員が普段の日常会話を、ご利用者を知る糸口として、目的意識を持ちながら、ご利用者に関わり、その知りえた情報を職員間で共有し、新たなニーズを発掘していくことが出来ればと考えています。その思いと現状の間の重なる部分をチームで見つけることが出来たら、ニーズや、動機になるのではないか?とも、考えています。

    今回、一人のご利用者のアセスメントを行うのに多くの時間を費やしました。日々の業務が多忙である中、詳しくアセスメントすることは難しいことだと思います。しかし、今後は来ていただいている全てのご利用者の、詳しいアセスメントを行い、ご利用者像を把握し、ご本人の思いを引き出し、より良いサービス提供が出来るように努力していきたいと思っております。