Cina 株式会社シーナ
「あきらめない介護」、「明るい老後」、「望まれる給食」で
高齢化社会をサポートする株式会社シーナです。
事例紹介 事例紹介
  • 2019.04.12
  • 「あのお好み焼きをもう一度」

  • アーチ・デイサービス 新神戸
  • 今回の事例は、以前お好み焼き屋を営んでいたご利用者が、デイサービスで時折開催されるイベント食(お好み焼き)を通して、営んでいた当時の自身を思い出し、今後の活力に繋げてほしいという全職員の想いから生まれたものです。

    先ずは、ご利用者の簡単なプロフィールからご紹介します。

    女性75歳。要介護度は2。

    既往歴として、多発性脳梗塞・乳がん・うつ病・糖尿病・腰部脊柱管狭窄症。

    デイサービスご利用開始は、平成30年1月。週1回の1日利用からスタートしました。

    初回の担当者会議に於いて、利用に至るまでの経緯を詳しく聴かせてもらえました。

    その中でも、転倒した時期の恐怖は今でも覚えておられ、以降は歩行への不安を逐一吐露されています。その際、続けられるか…本当に歩けるようになるのか…と不安を訴えられる一幕もみられました。更に、今回初めてのデイサービス利用となる為、今まではヘルパーさんの支援が多かっただけに、自身が頑張れるかどうか?という不安を募らせているとも話を聴かせてくれました。

    デイサービス利用開始に伴い、達成感を持ち運動への意欲が高まるようにと次の提案を行いました。先ずは、歩行時に自身で意識してふらつかずに歩くこと。ふらついても手すりをしっかり握れるよう握力をつけること。ポータブルトイレを使用しなくなること。この三点を意識してもらい、利用中は各種運動に取り組んでもらいました。

     

    転倒への恐怖心は、歩行意欲の障害になります。

    そこで、転倒しても大きな怪我(骨折等)をしないことを念頭に置き、随時声掛けと共にトレーニング時の説明ポイントを伝えました。転倒予防に必要なことは「筋力・バランス機能・ふらつきへの恐怖心・環境整備」が考えられます。

    デイサービスで実施している手すり運動でのステップ昇降は、下肢筋力向上に繋がります。バランス機能向上に向け、ボール運動を活用します。ボールを足で踏むことで、ふらつきを確認し体幹を鍛えます。最後に、転倒した際に手をついても手首折れないよう、手首運動も重視しています。その他にも、様々な内容の運動を継続して取り組んでもらった結果、

    2月中旬  入浴時、リハビリパンツ内の失禁がみられなくなる。

    3月初旬  布パンツで来所される。

    3月下旬  ポータブルトイレの使用なくなる。

    4月中旬  自宅内を杖なしで歩行開始。スムーズに歩行可能。

    5月中旬  フロア内の歩行に於いて、ふらつきが軽減する。

    という、目に見える効果が出始めました。

     

    ご利用開始から約1年が経過したある日、トレーニングの成果についてご本人より「本当に、ここにきたおかげで歩けるようになった!こんなにも歩けるようになるなんて思いもしなかったから、よかったわぁ!」との話を聴かせてくれました。ご自身でも、身体の変化を実感できるようになったことは、職員にとっても喜ばしいことです。しかし、経験上ご本人の思いが強いほど運動への意欲が増し、歩行状態等の身体状況が各段に良くなります。しかし「これだけできるようになれば、もう大丈夫。」との安心感が出現し、トレーニングへの意欲低下や流れ作業的な動作になり、これ以上の改善が望めなくなります。そこで、意欲の低下を阻止する為、以前お一人でお好み焼き店を営んでいたこともあり、ご本人の願いでもあった「当時のお好み焼きを作ってみたい!」との想いを実現する為のプログラムを開始しました。

    その想いを実現する為に、イベント食を利用しました。給食部の全面協力の元、ご本人と一緒にお好み焼きのタネ作りからスタートしました。本来なら、当日は入浴予定でしたが、この日の為に訪問介護職員に依頼し、前日に入浴を済ませていました。その為、午前中から長芋をすりおろす等の準備を行う事が可能となる等、予定にはなかった工程から参加してもらうことができました。そして、約一時間をかけて下準備が無事に終了しました。

    ここからが本番です。実演中は、約1時間もの間一度も座らず、お好み焼きをおいしく焼く方法を活き活きと語られる等、慣れた様子で焼いてもらうことができました。その結果、職員や他のご利用者が揃って絶賛するお好み焼きが完成しました!本人からも「店をやってた時の味やわ!」と自画自賛の言葉も聴かれ、当初の想いを実現することができました。

    この事例を通して、改めて機能訓練を重視した当デイサービスにしかできないことがあると実感できました。身体機能や日常生活活動を見るだけでは十分と言えず、語りをしっかりと傾聴した上でご利用者の想いを把握し、総合的に支援をすることが必要です。

    今後も、この経験を活かし、ご利用者個々の想いを引き出しその想いに応えられるよう、職員一同力を合わせて支援していきます。