Cina 株式会社シーナ
「あきらめない介護」、「明るい老後」、「望まれる給食」で
高齢化社会をサポートする株式会社シーナです。
お知らせ お知らせ
  • 2017.03.18
  • 「お風呂、お酒、お花、あっこ、みんな大好き」

  • 介護事業部
  • 翔月庵神戸大開での事例を紹介させていただきます。

    <プロフィール>

    ・昭和6年 生まれ 87歳 要介護4

    <既往歴>

    ・直腸がん(肺・肝臓に転移) 狭心症 心房細動

     

    <入居までの経緯>

    タクシー会社に定年まで勤められ、お子様は長男・次男・長女3人でそれぞれ独立後、奥さまとお二人暮らしでした。お酒が大好きで頑固なお父さんだったそうです。

    平成19年狭心症・心房細動診断で投薬治療、平成23年に直腸がんでマイルス手術を受ける。肝臓への転移があったが、ご家族の希望により抗がん剤治療等は行っていなかった為、医師からは余命宣告を受けておられました。

    奥さまの献身的な介護でストマ交換など身の回りのお世話は全ておこなわれていましたが、体調を崩されお父様の行先を探されていた娘様が翔月庵神戸大開に相談に来られ入居となりました。 

    入居当初、背が高く体格の良いご本人はせいぜい召し上がられても大スプーン6杯程度。どうすれば食事が進むのか? ご家族の意見を参考に色々と試させて頂き、翔月庵での生活にも慣れられた頃から徐々に食事量も増え、時には見違えるほど召し上がられ、職員から拍手が起こっていました。

    その後デイサービスでのトレーニングにより下肢筋力を鍛え、新たな変化が見られました。

    ・活動量が増え居室内で大好物のチョコレートをご自身で取りに行く為に歩こうとされる。 ・「家に帰るんや」と仰り、ベッドから降りられ居室を出て行こうとされる等・・・。

    まだ歩行が不安定な為、お近くに伺った際は必ず職員が、お部屋の様子を何度もこっそり覗かせて頂きました。

     

    元々頑固なお父様だったそうですが、いつもご自身のことよりもご家族の心配をされ、奥様や娘様・息子様・お孫様の話しする時は当時を思い出され涙を流されて、本当にご家族のことが大好きなのだと実感しました。

     

    その後病気の進行で体調が優れない時には投げやりになられ、大好きだったお風呂に誘っても、職員の声は聞こえているはずなのに目を閉じ微動だにしない日や、時には「離さんか、触んな」と声を荒げることもありました。根っからのお風呂好きなので入ってしまえば「気持ちええな」と歌を歌われることも分かっている職員は居室に何度も足を運びました。

     

    一時期はストマ外しが続き娘様と相談し、保護のため手作りの腹巻を使用することにしました。「あっこ作ってくれたんかぁ」と大変喜ばれ、腹巻の位置を工夫することでさらにストマ外しが軽減されました。

     

    ですが、だんだんと「なんやしんどい」「ご飯はいりません」と不調の訴えが増え、職員が訪室しても目を開けず聞こえないふりをすることも多くなり、食堂に上がっても食事には手は付けない日が増えていったため、ご家族と相談し大好きなパンや飲み物を用意すると「あっこ(娘様)が持ってきてくれたんか」と嬉しそうに召し上がっておられました。

    食事が欲しくないときでも「あっこちゃんのパンがありますよ」とお伝えすると「あっこのパンかぁ」と頑張って食堂へ行かれました。

     

    しかし、次第に大好きだったパンを残されるようになられました。

    大好きだったお風呂も体力面を考慮しシャワー浴となりましたが「しんどい・ほっといてくれ・行かへん」と仰る日が増えていきました。しかし元々綺麗好きであり毎日継続されていたこともあります。

    ・歯磨き・髭剃り・洗顔・トレードマークの黄色いタオルを首に巻く

    ・ベッドに座る前にシーツのしわを伸ばしゴミがないか確認し座る

     

    ご自身でできることは継続し頑張られていましたが、その頃ご家族よりガンが肺に転移し、かなり大きいと告げられました。訪問診療・訪問看護・ご家族・翔月庵で連携しサポートしていきました。入浴もしんどい時はシャワー浴又は清拭で対応し、入浴後は特に疲れて食事が進まない為、エンシュアとパンを提供というように、その時の体調に合わせご本人様の意見を尊重し対応していきました。時々、「酒が飲みたいなぁ」と仰ることがありましたが、何もできないまま時間が過ぎていきました。

    季節の花を見せてあげたいとの思いでスタッフがお部屋に桃の花を飾りました。ご逝去される2日前に娘様(あっこさん)がお父様の好きだったお酒を持ってこられ呑ませてあげたいとのこと。主治医に確認し念願だったお酒を口にされました。初めはお湯に少量のお酒を入れると「こんなん酒違うわ」と仰り、少しお酒を足しながら飲まれたそうです。

    残りのお酒はまた呑める機会があればと居室に置いて帰られた娘様から翌日翔月庵に電話があり私の代わりにお酒を飲ませて欲しいと。スタッフと看護師がお酒を出すと「呑んでえんかぁ」と笑顔がみられました。それでもこだわりが強くお湯割りの割合にはきびしかったようです(笑)。最後に晩酌ができたことはご本人もご家族も大変喜ばれていました。

    桃の節句に旅立たれた。

    その後も職員へのお手紙や父の好きだったお花を見て、時には父を思い出して欲しいと娘様手作りのフラワーアレンジメントを送って下さり、事務所に飾っています。

    私たちも多くの経験をさせて頂き貴重な時間を一緒に過ごすことができたことに感謝致します。